- 氏名:吉澤 章(よしざわ あきら)
- 職業:創作折り紙作家
- 生没年:明治44(1911)年生-平成17(2005)年没
- 出身地:栃木県河内郡上三川町大字上三川字下町
来歴
折り紙との出会い
吉澤章氏は、明治44(1911)年に栃木県上三川町で生まれました。4歳の頃、近所のお姉さんがくれた折り紙の舟が折り紙との出会いでした。13歳で上京すると、鉄工所で働きながら折り紙研究を本格的に開始しました。吉澤氏が折り紙を一生の仕事にしようと決めた頃は、戦後間もない復興期であり、折り紙作品の美術的地位は他の芸術作品と比べてまだまだ低くみられていました。
国内外での活躍
昭和25(1950)年、美術造形作品として折り紙を初めて発表しました。昭和29(1954)年には、海外で日本の創作折り紙を広める目的で「国際折り紙研究会」を設立すると、昭和30(1955)年に海外初個展をオランダ・アムステルダムで開催し、昭和34(1959)年にはニューヨークでもその作品展を展示するなど、‟ORIGAMI”は海外で徐々に盛んになっていきました。
また、外務省や国際交流基金から派遣されて世界約50カ国に赴き、創作折り紙の普及に努めるとともに、国際交流にも多大なる功績を残しました。
一方、国内においても精力的な創作活動を展開し、昭和38(1963)年に『たのしいおりがみ』にて毎日出版文化賞(人文・社会部門)を受賞、昭和58(1983)年には折り紙による文化普及の功績により‟勲五等双光旭日章”を受勲するなど非常に高い評価を受けました。
平成15(2003)年には、故郷上三川町で初の作品展を開催し、58日間の開催期間中に約15,000人が来場しました。
氏の求めたもの
上三川町の作品展から2年後の平成17(2005)年3月14日、94歳の誕生日を迎えたその日、吉澤氏は折り紙に全てを捧げた人生の幕を閉じました。死後もその評価は高く、平成24(2012)年3月14日には、生誕101年を記念してGoogleのホームページのロゴが「折り紙」バージョンとなりました。
吉澤氏は、創作のテーマを広く世界の事物に求めることとし、自然界のあらゆる動植物、地球や宇宙の現象にまで視野を広げる一方で、日常の生活、更には人の心の移ろいも、一枚の紙に託して表現をしました。これは吉澤氏が持つ独特な感性、そして多様な表現様式から生み出されたものであり、その原点は故郷上三川にあったと語っています。
著書および関連書籍
- 『新しいおりがみ藝術』折紙芸術社(1954)
- 『折り紙読本I』緑地社(1957)・鎌倉書房(1983)・ニューサイエンス社(1999)
- 『おりがみ』国際折り紙研究会(1958)
- 『たのしいおりがみ』フレーベル館(1963)・鎌倉書房(1974)
- 『おりがみえほん』フレーベル館(1964)・鎌倉書房(1978)
- 『やさしいおりがみ』フレーベル館(1971)・鎌倉書房(1978)・ニューサイエンス社(2005)
- 『美しい折り紙:吉澤章創作折り紙作品集』鎌倉書房(1974)・ニューサイエンス社(2013)
- 『母と子のたのしい折り紙』家の光協会(1979)
- 『折り紙博物誌I(動物のいろいろ)』鎌倉書房(1979)・ニューサイエンス社(2000)
- 『折り紙博物誌II(季節と行事)』鎌倉書房(1979)・ニューサイエンス社(2000)
- 『創作折り紙(NHK婦人百科)』日本放送出版協会(1984)
- 『吉澤章の楽しい折り紙』主婦の友社(1985)
- 『折り紙読本II』鎌倉書房(1986)・ニューサイエンス社(1998)
- 『生命豊かな折り紙:創作折り紙作品集』双樹社(1996)
- 『米寿記念 吉澤章創作折り紙展』朝日新聞社(1999)
- 『吉澤章創作折り紙展』吉澤章創作折り紙展事務局(2008)
- 『動物達の饗宴-吉澤章の折り紙-』SieboldHuis(2011)
- 『一枚の紙から生まれる奇跡 吉澤章創作折り紙の世界』佐野美術館(2014)
- 『寄贈記念図録 吉澤章創作折り紙』紙の博物館(2017)
経歴
明治44(1911)年 | 栃木県河内郡上三川町大字上三川字下町に生まれる | |
大正13(1924)年 | 13歳 | 上京 |
昭和13(1938)年 | 27歳 | 鉄工所で働きながら本格的な折り紙研究を始める |
25(1950)年 | 39歳 | 栃木県教員組合の推薦により教育的美術造形としての折り紙を発表 |
29(1954)年 | 43歳 | 国際折り紙研究会を創設 初の著書『新しい折り紙藝術』を刊行 |
30(1955)年 | 44歳 | 初の海外個展をオランダ・アムステルダムの市立美術館で開催 |
34(1959)年 | 48歳 | アメリカ・ニューヨークのクーパーユニオン美術館で展示 |
38(1963)年 | 52歳 | 著書『たのしいおりがみ』で毎日出版文化賞を受賞 |
41(1966)年 | 55歳 | 外務省の要請により折り紙講師としてオーストラリア・インドネシアなどに派遣される |
46(1971)年 | 60歳 | モービル児童文化賞(現:東燃ゼネラル児童文化賞)を受賞 |
47(1972)年 | 61歳 | 国際交流基金の要請によりヨーロッパ各国に派遣される |
50(1975)年 | 64歳 | 第11回上三川町文化祭にて「新しい折り紙について」と題し講演 |
58(1983)年 | 72歳 | 勲五等雙光旭日章を受勲 |
59(1984)年 | 73歳 | フランス・パリのエスパス・ピエール・カルダンで「日本の折り紙展」を開催 東京で個展を開催 |
61(1986)年 | 75歳 | 外務大臣賞を受賞 |
62(1987)年 | 76歳 | 中国・杭州市で作品展示および創作折り紙について講演会を開催 イタリア・ミラノで作品展を開催 |
平成元(1989)年 | 78歳 | ペルーの「世界折り紙展」に特別出品 |
2(1990)年 | 79歳 | 東京で個展を開催 |
4(1992)年 | 81歳 | スペインのセビリア万国博覧会日本政府館に「日本の四季」を折り紙で展示 |
5(1993)年 | 82歳 | フランス・パリ及びサンフロランタンで個展を開催 |
6(1994)年 | 83歳 | アメリカ・マサチューセッツ州のピーポディ・エセックスで個展を開催 |
7(1995)年 | 84歳 | 東京の練馬区立美術館で「国際折り紙研究会四十周年記念展」を開催 ドイツ・ヴェルツブルクのシーボルト博物館他3都市で展覧会を開催 |
11(1999)年 | 88歳 | 東京・札幌・京都・埼玉で米寿記念「吉澤章創作折り紙」展を開催 |
12(2000)年 | 89歳 | 国際交流基金の要請によりオマーンに派遣される 東京の紙の博物館で50周年記念企画展として「吉澤章創作折り紙展」を開催 |
14(2002)年 | 91歳 | 静岡の佐野美術館で「吉澤章創作折り紙の世界」展を開催 |
15(2003)年 | 92歳 | 上三川町の大黒屋で「吉澤章創作折り紙展」を開催 |
17(2005)年 | 94歳 | 誕生日の3月14日に逝去 |